「そんなに苦しい?」

「みくちゃんの思う通りにすればいいんじゃない?」

「ここに来れば、寂しくないだろ?」




「泣くなよ」

「ここにいるから...そんなに泣くなよ」



狭いバックヤードで抱きしめられた。





「ダメだよ...そんなことしないでよ」

ナナヌーの腕から逃れようと、身体をよじって抵抗したけど


「ダメじゃない...じっとして...」

より強く抱きしめてきた。



彼の心臓の音が...温かさが...
隙間なく...くっついている全身から伝わってくる。



髪を撫でられ、頬を伝う涙をやさしく拭われ
慈しむように両手でわたしの顔を包み

じっと見つめてくる。


その瞳が、とてもとても穏やかでやさしくて...透き通っていて
また、涙が溢れてきた。


溢れ出て止まらなくなった。


前髪をかき上げられ、おでこにおでこをくっつけてきて

「そんなに流すと涸れちゃうよ....」


優しい声。





「...ね...泣きすぎだよね...困らせてごめんね」



「困ってなんかないよ。大丈夫だよ」



降り注がれるやさしさに
強張っていた身体からスッと力が抜けていった。

それを感じ取ったナナヌーは



わたしの顎をクイッと持ち上げ
また、わたしをじっと見つめてきて


そっと触れるだけの...やさしいキスを...




「...キス..された...」

今を感じたくて...確かめたくて...言葉にしてみた。



「うん...したかったから...」

...と、照れくさそうなナナヌー





二人同時に見つめ合い...微笑んだ...。





それからは、タガが外れたかのように...

キスをした。

お互い何も言わず、ただただ...くちびるを重ね合わせた。





始めてのキスは...

暗くて狭くて甘い雰囲気とはほど遠いバックヤードだった...

布一枚、カーテンの向こう側には
賑やかで煌びやかな世界が広がっていて、みんな陽気に騒いる声が聞こえてくる。

けど、この狭い空間だけは、二人の世界になっていて
お互いの淋しさを溶かすかように、抱きしめ合いキスし合った。





このまま...時間が止まればいいのに......

心からそう思った...。





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読んで頂いてありがとうございました。蝶々結び

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